成金新巻鮭は自分の会社へ車を飛ばす。
会社のメインコンピュータがいま、せっせと『〔新巻鮭をただの鮭に戻すプログラム〕をつくるプログラム』を使い、〔新巻鮭をただの鮭に戻すプログラム〕をつくっているはずだ。
そして、それは間もなく完成する。
「早くできたてホヤホヤの〔新巻鮭をただの鮭に戻すプログラム〕でただの鮭に戻り、
自伝を書いたり、オンラインサロンを開いたり、テーマパークをオープンして、存分に大儲けしたい!」
右に曲がっては、左に曲がり、また右に曲がったり、左に曲がったり、まっすぐ進んだりして、
大洗港のとある廃倉庫にたどり着く。
成金新巻鮭が車を降りると、倉庫の大きな扉が開き、扇風機職人が立っていた。
「あなたは、いったい?」
成金新巻鮭がそう訊くと、
扇風機職人はうっすらほほえみ、帽子を脱いで放り投げる。
そうして現れたその顔は扇風機職人ではなく、地元の警察署長だった。


ぼくの代わりに海王星から帰還したロケットから降りたった海王星の腹話術師は、詰めかけた報道陣に自慢げに語る。
「この腹話術の人形は、海王星の最先端技術でつくられているのです」と。
「高性能コンピュータと人工知能を内蔵し、さまざまな声を出すことができます。
人間の声に限らず、動物の鳴き声を出すことも。犬の鳴き声だけで120種類もあるのです」
海王星の腹話術師はつづける。
「さらにスマホの専用アプリで遠隔操作できるうえに、
胸部に内蔵されているモニターYouTubeを観ることもできるのです!」と。
報道陣から、地球に来た目的を尋ねられると、
「海王星に来た地球人に、地球にはこんなことわざがあると教えてもらいました。
『天ぷらは塩や天つゆで食べるより、醤油をびしゃびしゃにかけて食べるのがいちばん美味しい』
それを聞いて、醤油をびしゃびしゃにかけた天ぷらを食べてみたくなったからです」


そして
海王星からロケットで帰還するはずだったぼくは、天使と出くわしていた。

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↑天使