天使は云う。
「わたしは天使です。
みんなに好かれる人気者です。
いろんなポイントも人間の3倍もらえます」


成金新巻鮭はあきらめたようにフッと笑って、
「やられましたね」
地元の警察署長は満足げな笑みを浮かべ、
「やってやりました」
地元の警察署長は、署内の腹心の部下を総動員し、道路標識を立て替え信号機を操作し、自分の会社へ帰ろうとしていた新巻鮭を、この大洗港の廃倉庫へ誘導した。
「ブリと大根の兄弟から被害届が出ています」
「オレは終わりですね?」
「終わりですね」
成金新巻鮭は逮捕された。

帰りの車中、地元の警察署長は腹心の部下に語る。
「いやね、はじめはね、成金新巻鮭の逮捕に乗り気じゃなかったんだよ。
でもね、成金新巻鮭もブリと大根の兄弟の呑み屋にツケを溜めていると聞いてね、許せなくなったんだよ。
実はわたしもブリと大根の兄弟の呑み屋にツケを溜めていてね、
あの店に…ブリと大根の兄弟の呑み屋にツケを溜めていいのはわたしだけだからね、わたし以外の誰かがツケを溜めているのが許せなかったんだよ」

留置所で成金新巻鮭はぼんやり天井を眺めながらつぶやく。
「好きで新巻鮭になったんじゃないんだ……人間に勝手に新巻鮭にされたんだ……。
新巻鮭にさえならなけりゃ…
新巻鮭にさえならなけりゃ……」


そのころ、
近所の美食家でもあるサッカー選手が、プライベートジェットで市街地の上空を飛んでいる。
かれの眼は〔コーンの入っていない味噌ラーメンを出す店を探すプログラム〕を搭載したレーダーに注がれている。
近所の美食家でもあるサッカー選手は、成金新巻鮭に憑依され、〔『新巻鮭をただの鮭に戻すプログラム』をつくるプログラム〕をつくらされるふりをして、
〔コーンの入っていない味噌ラーメンを出す店を探すプログラム〕をつくっていたのだ。
「このプログラムを搭載したこのレーダーでコーンの入っていない味噌ラーメンを出す店を探し、
そして、今度はそのなかから最も美味しい店を探すプログラムを開発し、それを使って最も美味しいコーンの入っていない味噌ラーメンを探し出し、それをみんなに広めれば、
おれの人気はさらに上昇する!」


天使が指揮棒を静かに振ると、パイプオルガンの音色が響きだす。とても小さく、厳かに、穏やかに。

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「あ。
フォーレの『レクイエム』……第7曲イン・パラディスム……」

ぼくは心底ほっとする。


終わり