ある土曜日の午後、
古代ヨーロッパの人情派で有名な哲学者が発案した〔某スーパーのプライベートブランドのレトルト牛すじ煮込みを100倍おいしくする方法〕というのをテレビで観たぼくは、さっそく試してみたくなる。

庭にテントを張り、火を起こす。
ダッチオーブンとスキレットを火にかける。
肝心の某スーパーのプライベートブランドのレトルト牛すじ煮込みが、近所の某スーパーにはなかったので、
レトルトの筑前煮で代用することにする。

陽が暮れかかり、家の前の道を、ランドセルを背負った子どもたちが、
「急げ!」
「青春は短い!」
と叫びながら駆けてゆく。

向かいのアパートのベランダから、行きつけのコンビニで働く女の子がこちらをじっと見ている。
じつはそのことにだいぶ前から気づいていたぼくは、
あまりタバコを吸わないようにしていたりしていた。

IMG_8641

終わり